| 騎士と呼ばれる人々がいた。 彼らは常人よりも優れた体力、筋力、反応速度を持った。 そして彼らだけにしか、巨大な究極の人型兵器、『モーターヘッド』は使いこなせなかった。 騎士がいくら反応に優れるといったところで、 エンジンの出力、火器兵器の制御、ギアタイミングの切り替えといった機器制御の全てを 戦闘中にこなすには限界があった。 誤解を恐れずに言うなれば、MHの可能性に騎士の能力が追いついていなかった。 時は流れ。 一人の科学者が、MHと騎士をサポートするための研究を続け、 狂気とも思える成果を世に送り出した。 『ファティマ・ファティス』 か細い四肢、小さな頭部、可憐な容姿の少女だった。 ただ、彼女の額には、赤い宝石のような煌めきをもつクリスタルが輝いていた。 彼女は「生体コンピュータ」。 MHのコントロールだけを目的に生み出された、人工生命。 人としての権利をいっさい持たされない、哀れな存在。 人に従順であるよう、扱いやすいようマインドコントロールも施された。 可憐な容姿だけに、その運命はいっそ残酷なまでに思われた。 一度MHに乗り込めば、彼女たちはその全力を騎士のサポートに捧げた。 MHは、ファティマの存在を得て、兵器として完全な存在となった。 彼女たちは、騎士を選ぶ。 己ともっとも相性のいい騎士を選ぶのとそうでないのとでは、 MH駆動に3倍ちかい数値の差がでてしまう。 故に、戦闘効率を高めるためにファティマたちに許された、たった一つの小さな権利が 星団法に特記された。 それは。 「マスター」を選ぶこと。 狂気の研究は、さらなる狂気を喚んだ。 とある天才ファティマ制作者が、とあるMH制作者と共同で作り出した。 MHとペアで作られた男性型ファティマ・ファティス。 ゆらゆらと湯気をたてる水槽の脇に、その科学者は立っていた。 「……許せ、おまえをこんな化け物に作ってしまった私を… すべての能力を、騎士にではなく、あのMHにつぎ込むようにした私を… この先のおまえには、想像を絶するような運命が待ち受けているだろう。」 水槽の中には、青年型のファティマが横たわっていた。 ゆるくウェーブのかかった金髪は長くのび、水草のようにたゆたっている。 指が、わずかに動いた。 細い線で描かれたマーキングの施された腕をさしのべ、ファティマが起きあがろうとした。 「まて、あわてるな。今羊水を切る。」 制作者は手元のコンソールを操作し、水槽の羊水をすべて排出させた。 異質なファティマだった。 男性型であることを差し引いても、なお違和感を拭えない。 ファティマ一般に共通するか弱さ、はかなげな雰囲気など、微塵もない。 威圧感を与える…意志の強さ、カリスマじみたものさえその裸身ににじませている。 ゆっくりと起きあがり、ゆっくりと目蓋をあげた。 ファティマの瞳は、何もかもを見透かしそうな、透徹したアイスブルーだった。 「たとえどのような運命であれ、私は、……」 「いうな!“シャア”! ……言ってくれるな。」 制作者は激しく否定し、力無く彼につけるクリスタルを手に取った。 「…マーキングを消して、髪を切ろう。 主人となる騎士を選ぶための、まともな披露目も受けさせてやれぬ… 私を許してくれ。」 『生みの親』に、“シャア”はなにもかもわかっている、と笑ってみせた。 MH「サザビー」を駆るファティマ、 赤騎士【Le CHIVALRIES ROUGE】“CHAR AZNABLE” 彼の物語は、今、始まった。 |
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