【破壊責任者】









「……ナニ、コレ。」

ジュドーは思わず謎のプレートを指さした。
サザビーのコクピット内部にひっそりとあったそのプレートは、
プチ・モビやホビー系MSではちょっとお目にかかれない、というかあり得ない存在だったのだ。
そのうすっぺらい金属板に刻まれていたのは、ジュドーだってよくお世話になっている二人の名前だったが、
問題はその肩書きというか監督責任範疇を示す役柄というか。


「整備責任者:アストナージ・メソッド 、 破壊責任者:アムロ・レイ、……って、ナニ?」


貧乏所帯ではあるけれどこのロンド・ベル。
各機関・民間・連邦とりまぜた中でも優秀な(問題児ともいう)と最新鋭機体が配備されている(はずの)、
(一応の、建前としては)いわば連邦軍の最後の切り札、最後の砦的部隊でもある。
であるからして、当然のことながら敵部隊も精鋭部隊・最新鋭機体で闘いを挑んでくる。
元ジャンク屋だったジュドーとしては、そうした機体たちはスクラップになってさえ宝の山。
戦闘後は進んで掃討・機体回収を買って出てはちまちまと機材を集めてはネットオークションにかけて小遣い稼ぎをしていた。

それもこれも、すべては最愛の妹・リィナのため。ちょっとでも稼いで、良い学校へ行かせるため。
けれど先日ブライトにバレて怒髪天を衝く勢いで巨大な雷が落ち、ネット環境はきっぱり取り上げられた。
ついでに反省房がわりの図書室謹慎を申し渡され、人手不足なんだからそれは勘弁とクルー全員から泣きつかれて
代替策の処罰として当面の間は出撃メンバーから外され整備班勤務となった。

……ジュドー当人にすれば普段から愛機ZZそのほかのメンテも手がけていたから、
単に出撃義務だけ外されたとしか思っているのか、全く堪えていないようだった。

そんなわけで、アストナージやアムロを手伝って……ついでにちょろまかせそうな部品はないか探しながら
(もちろんサザビーの整備は部品ちょろまかしが目的だった)機体整備に汗を流していたジュドーだった、が。

それにしても破壊責任者、だなんて。しかもアムロさんが? なんなの、これ?

「どうした、ジュドー?」
「うわぁっ!」

いきなり当人ご登場では、さすがのジュドーも半端なく驚く。
明後日の方へ飛んで行きかけたレンチを難なくキャッチすると、
アムロも滝のように配線が垂れ下がりあちこち基盤がむき出しになったコクピットに滑り込んできた。

「あの、っ、あれ、あれいったいなんなんですか!」

驚いた勢いのままで聞いてみれば、ああ、とアムロは涼しい顔でプレートを弾いた。

「軍事関係だとね、万が一の場合には処分しなきゃいけないものがいっぱいあるんだ。
たとえば書類なんかだったら、緊急退艦命令が下ったときには責任持って硝酸で焼き捨てる、とかね。。
MSやMAも例外じゃない、例えば今のサザビーみたいに、整備中とかで出撃不能な場合もある。
こいつらも機密の塊だからね、そんなときは責任持って担当者が破壊する……そう決められているんだ」
「そっかぁ。……じゃあなんでアムロさんがサザビーの破壊責任者になってるんですか?」
「もちろん」

アムロは笑った。これ以上は無いほどすがすがしく、綺麗に、そしてどこか真っ黒な笑顔だった。

「あいつの機体に手を掛けていいのは、シロッコでもないハマーンでもない、
全宇宙でも、オレだけだ。
……だからジュドー、オレが心血注いで整備したサザビーから部品を取ろう、なんて思うなよ?」
「は、はははは、はいっっっっ!」

この人だけは絶対に敵に回したくない。つか、冗談でもこの人の前でシャアさんにちょっかい掛けたらだめだ!
もしも。もしもこのさきハマーンに会えたなら、
そこが街だろうが戦場だろうが全力でそれだけは伝えなきゃとジュドーは固く心に刻んだ。


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